相続不動産の活用法で迷ったらどうする?受けた方が考えたい選択肢をご紹介

天谷 謙

筆者 天谷 謙


相続によって不動産を受け継ぐと、何から取り掛かれば良いのか戸惑う方も多いでしょう。「そのまま持ち続けるべきか」「活用したほうがよいのか」「売却も選択肢?」と悩みは尽きません。本記事では、相続不動産の現状把握から具体的な活用法、必要な準備や相談先まで、分かりやすく解説します。初めて相続する方にも、一歩ずつ行動できるヒントをご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

相続した不動産を把握するポイントと初期対応(相続を受けた方がまず押さえるべき基本事項)

相続により不動産を取得された方は、まず以下の項目を確認することが重要です。

確認項目 内容
所在地・現況 土地・建物の所在地、建物が空き家かどうかを確認します。
名義・遺産分割 共有名義になっているかどうか、遺産分割協議が済んでいるかどうかをチェックします。
税金・維持費 固定資産税や維持費の負担を把握することが大切です。

まず、不動産の所在地や地番など基本的な情報と、建物の状態(空き家、古屋、土地のみなど)を把握します。空き家として放置されている場合、事故や権利関係のトラブルが起きるリスクがあるため、必要に応じて現地確認や活用検討を進めましょう。

また、不動産が共有名義になっていると、活用や売却には相続人間の合意が必要となります。遺産分割協議がまだの場合は、速やかに関係者間で話し合いを進めることが求められます。

さらに、相続登記は必須です。名義の変更には司法書士への相談が望ましく、費用や手続きの流れも専門家からのサポートを受けましょう。空き家のまま放置すると、固定資産税や都市計画税の負担が継続し、将来的なコスト圧迫につながる可能性がありますので、管理費や税額を早期に把握することが重要です。

活用の方向性を考える(自己利用・収益化・売却の選択肢を比較)

相続した不動産の活用にあたっては、主に「自己利用」「収益化」「売却」の三択があります。それぞれ利点と留意点を整理し、最適な判断につなげましょう。

活用方法 利点 留意点
自己利用(セカンドハウス、趣味の拠点など) 生活の質が向上し、愛着のある不動産を活かせます。 収益を生まないため、固定資産税などの維持コストが継続します。自己利用の範囲にも限界があります。
収益化(賃貸経営、駐車場経営など) 家賃収入や駐車料金によって固定資産税等の負担を賄え、プラス収支も期待できます。 賃貸経営では管理や空室リスク、駐車場経営では立地や需要の見極めが必要です。初期準備や運営に手間がかかる場合があります。
売却による現金化 維持管理費負担から解放され、迅速な現金化が可能です。また、税務上の特例(空き家特例や取得費加算など)を活用することで譲渡所得税の負担を軽減できる場合があります。 譲渡益に対して譲渡所得税や住民税が課税されます。譲渡所得の計算には取得費・譲渡費用を含める必要があり、税務処理が複雑です。加えて、印紙税や登録免許税などの費用も発生します。

それぞれの選択にはメリットと注意点が明確に存在するため、ご自身の目的や資金状況、負担可能なリスクに応じて判断されることをおすすめします。

収益化を目指す場合の具体的な活用手法(相続を受けた方向け)

相続した不動産の収益化を図る際には、まず賃貸活用の検討が基本です。建物をそのまま賃貸する場合には、大きな改修を必要とせず開始できる利点がありますが、築年数や設備の状況によって入居率や賃料に影響が出るため、現状の調査と簡易なリフォームによる居住性改善が重要です。一方、リフォームや建替えを伴う賃貸経営では、建物の価値向上により賃料収入の最大化が見込めますが、初期投資やローン返済を含めた収支計画が不可欠です。また、賃貸物件としての運営には、入居者募集、管理契約、賃貸借契約の締結など、不動産業務に関する基本的な手続きも必要となります。

活用手法内容ポイント
原状賃貸現状の建物そのままを賃貸リフォーム費不要/稼働性要確認
リフォーム後賃貸改修して賃貸市場に対応収益性向上見込/初期費用発生
建替え賃貸立地に応じて新築賃貸物件を計画高収益可能/計画・資金調達が鍵

次に、土地のみを活かす場合、駐車場やトランクルーム、コインパーキングなどが考えられます。駐車場経営は初期費用が比較的小さく、舗装や区画整備でスタートでき、立地に適合すれば安定した収入源となります。トランクルームは、コンテナ型の設置で対応可能なため、比較的少額の投資で収益性が期待でき、利回りは6〜10%程度とされ、賃貸収入よりも中規模の収益が狙えます。

活用手法内容メリット
駐車場月極・コイン型で貸す低投資で開始可能/撤退も容易
トランクルームコンテナなどで収納スペース提供安定収入/中規模投資で高利回り

さらに、間接的な運用手法として、借地権設定や信託、事業受託があります。借地権(とくに定期借地権)を設定すると、長期にわたる安定地代収入が得られ、契約期間満了後には土地が確実に戻ってくる点が魅力です。ただし、地代は家賃に比べて低く、相続税評価の圧縮効果も借家経営に比べ小さい点に留意が必要です。また、借主の倒産などにより建物の取り扱いが複雑になるリスクもあります。

運用手法内容注意点
定期借地権設定期間を定めた借地契約による地代収入収入低め/借主破綻時の対応難
事業受託方式専門業者へ運営一括委託ノウハウ不要/手数料で収益低下

以上のように、賃貸経営・駐車場・トランクルーム・借地権設定・事業受託など、多様な活用手法にはそれぞれ収益性やリスクの差があります。立地、資金力、運営意欲、相続税対策の優先度に応じて、ご自身に最適な方法を選ぶためにも、現地調査や収支シミュレーションを専門家とともに進めることが重要です。

:活用する際の準備と相談先(相続を受けた方が行うべき準備と相談の流れ)

相続した不動産を活用する前に、まずは市場や周辺環境の調査など、企画設計に必要な準備を行いましょう。また、専門家への相談タイミングやそれぞれの役割、さらに相続登記や契約・行政手続きのポイントにも注意が必要です。

まず、市場や周辺環境の調査は、対象不動産の賃貸需要や地域の将来性を把握するうえで欠かせません。不動産ポータルサイトや自治体の人口動態情報、地価公示などを参考にして、賃料相場や空室率などを確認してください。周辺に住居や商業施設が増えているか、交通利便性はどうかなどの視点も重要です。

次に、専門家への相談タイミングと役割について整理します。下表のように、それぞれ役割と相談時期を把握しておくことが適切な準備につながります。

専門家 役割 相談のタイミング
司法書士 相続登記、戸籍取得、遺産分割協議書作成のサポート 相続発生後、なるべく早く対応[3年以内の義務化・過料あり]
税理士 相続税の申告・節税対策 相続発生から10か月以内に申告の必要がある場合
弁護士 相続人間のトラブル対応、遺産分割の代理交渉 遺産分割で意見がまとまらない、争いが予想される場合

最後に、手続き面で注意すべきポイントをまとめます。相続登記は2024年4月から義務化されており、相続を知った日または義務化日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。必要な書類として、被相続人の出生から死亡までの戸籍類、相続人の戸籍・印鑑証明、遺産分割協議書、固定資産評価証明書などが揃っているか確認してください。また、相続放棄や限定承認を選択する場合は、相続開始から3か月以内の申述が必要です。さらに、賃貸や活用の契約条件(賃料設定・契約期間・更新条件など)や、自治体への届出等の行政手続きも忘れずに検討しましょう。

まとめ

相続不動産の活用は、まず現状把握と初期対応が大切です。そのうえで自己利用、収益化、売却など選択肢を比較し、自分や家族に合った方法を検討しましょう。収益化を目指す場合でも賃貸や駐車場経営など活用法は多岐に渡ります。準備段階では市場調査や専門家への相談が不可欠です。手続きや税務の注意点も押さえつつ、計画的に取り組むことが将来の安心につながります。ご自身の状況に合った最適な方法を考えてみてください。

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